バージョンアップの呪縛

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今、利用しているソフトウェアをバージョンアップしようかどうかと考えるときに、有料でのバージョンアップか、無料でのバージョンアップかで、する必要があるかどうかを考えてしまうことがある。

無料バージョンアップであれば、特に費用はかからないため、新しいバージョンをインストールする手間と万一インストールしてうまくいかなかったときに戻せるようにしておけばそれだけで済むため、今使っているバージョンで特に困るバグがある場合や、安定性に問題がある場合、新しいバージョンでの魅力的な新機能があれば、そのままバージョンアップすることができる。

有料バージョンアップの場合、だいたいの場合、ソフトウェアを購入したときの定価の価格よりも安く買えるアップグレード割引があるとはいえ、それでも定価の1割から5割程度と結構な出費を強いられる。その出費がどの程度妥当かというのは使用しているソフトの利用者にとっての重要性や価値観によって大きく変わってくるだろう。

例えば、あるソフトウェアを非常に気に入って愛用していて、優れたソフトウェアを開発してくれた開発元に対して日頃から感謝と敬意の気持ちを持っている場合は、新しいバージョンでより安定性が増して新しい機能も追加されたとなれば、喜んでアップグレードするだろう。そしてそこには、時として製品のファンとしての気持ちや、またプロ用のソフトを使いこなしているプライドもあるだろう。うぴょりっくソフトではREALbasicとDigital Performer、Mac OS Xは常に最新版である。

反面、マイクロソフトのように初めから他社の模倣だけで独自性の欠片もなく(あ、欠陥だらけでセキュリティの概念が全くないどころか使用するだけであり得ない障害が発生し時に深刻な事態に陥るのがマイクロソフトならではの独自性でしたね) 粗悪品を悪質な恐喝的方法で大量にばらまき、時にはより優れたものを開発していた優良な企業を不正かつ悪質な方法でにつぶしておきながら、自社製品の修正は最新のバージョンでしか行わない上に最新版はまた高価であるというような場合は、そもそもこうした会社の製品にお金を払うことはおろか、ましてやアップグレードなどしてやる価値も全くないだろう。

両者は極端な場合だが、よく悩むことになるケースとしては、ソフトウェアを持っているが機能的にも安定性にもそこそこ十分に満足しており、新しいバージョンで提供される機能も特に必要ない場合である。意外とこうしたシチュエーションの時、出費するということとその金額は大きな障壁になる。

企業向けのエンタープライズソフトウェアであれば、年間保守という形で毎年保守料を払う代わりにサポートを受けるなどということもあるが、個人用のソフトでは、特にサポートが必要なければまた年間保守という概念もないものがほとんどである。(コンピューターリソースを無駄に消費するウイルス対策ソフトなどの類は、安くないウイルス定義ファイルの更新料を毎年徴収しているが、本来ウイルスがないプラットフォームであるMacでは常識的な気配りさえしていればウイルス感染は無関係であり、全員に必要なものでは全くないし、購入しておくべきものでも全くない)

また、新しいバージョンではアクティベーションが必要になり、いちいち認証を受けないとソフトウェアの利用ができないという場合もある。プライバシー情報の懸念やOS再インストール時、新しいコンピューター購入時の手続きの煩わしさなどを考えると、特に新しいバージョンが必要でなければアップグレードしたくなくなるだろう。

逆にソフトウェア開発を生業にしている企業から見ると、企業が存続し続けるためには継続して利益(=売り上げ、お金)を得ることが必要である。そのため、継続的にお金が入ってくる形でのビジネスモデルを維持するには、開発者を雇い続けて開発を続けなくてはならない。バージョンアップしてお金をユーザーから定期的に得ることは企業から見れば、何としても必須のことになるのである。そのため、アクティベーションなどの方法でユーザー認証をかけたり、使用期限を設けて定期的にお金を支払うようにする仕組みにしたりしている。

もっとも、違法コピーという別の問題もある。本来使用する権利のない第三者にソフトのCDを貸してしまえば誰でも使えてしまう仕組み、ゲーム機ではメディアであるCDがないと遊べないがパソコンの場合はインストールしてしまえばCDは要らないしCDのコピーもできてしまう。違法コピーされるからソフトが高いという弁明も聞かれるが、もし仮に違法コピーがなくなり全員が正規に購入するようになってもソフトの値段は簡単には下がらないだろう。これは高速道路はいつか無料にすると約束しながら甘い汁を蛭のように吸い続ける道路公団や税金を取りやすいサラリーマンから優先的に徴収する国税と同じ構造である。

利益を得る目的で、ソフトの開発を続けるために、不必要な機能追加を重ねて肥大化し、バグも指数関数的に増加し、新しいバージョンになればなるほど不安定になっていくようであれば、かえって開発を続けない方がユーザーのためにもなる。それに十分完成度の高いソフトウェアであれば不必要な開発はしないほうが良い。Windowsも95、百歩譲って2000で十分である。Vistaの何と醜く肥大化したことか。メタボリック要介護OSである。

そう考えると、最新版でも必要な機能だけを選んでインストールすることのできるオープンソースのソフトウェアは非常に優れているし理にかなっているといえる。例えばApacheもシンプルにWebサーバーだけに徹しており、必要ない機能はコンパイル時に外してしまうか、設定ファイルで外してしまえば極めて効率よく安定稼働する。Linuxデスクトップも必要な機能やアプリケーションだけ選択してインストールできる。

ソフトウェアの完成度が十分に高ければバージョンアップはする必要がなくなるため、開発者側からすれば、バージョンアップによる収入が途絶えてしまう。Mac OS XのようにOS環境がIA32に対応するなど劇的に変化しそれに追従せざるを得ない"特需"があれば、バージョンアップ自体はビジネスになっていくが、プラットフォームが安定し、アプリケーションの機能・性能が十分であれば、バージョンアップされなくなるため、定期的な収入が得られなくなってしまう問題がある。

その他、携帯の月額課金型のサービス提供モデルでのアプリケーションソフトウェアの使用権を提供というモデルもあるが、コンピューターの上で動くアプリケーションソフトウェアの従来からの仕組みに馴染まないため、なかなかうまくいっていない。

REALbasicは一風変わったライセンスモデルで、一定期間最新バージョンを使用し続ける権利、を販売している。アップグレードする権利がなくても使用する権利はあるが、最新版を使用するにはその権利を買うという形になっている。

うぴょりっくソフトの制作するMacのゲームで使用料型のモデルを行うのは強力なライセンスサーバーを作らなくてはならないなどの理由から難しいと考えているため、あまり考えてはいないが、そのモデルが適するような作品がもし作れたら、こうした形でのサービス提供型のソフトウェアも単に技術的興味から考えてみたい。