ソフトウェアシンセサイザーはリアルタイムに大量のデータへのアクセスが必要となるため、CPUパワーとメモリはもちろん、高速なストレージが必要になる。G4 1GHzクラスのPowerBookクラスでは2.5インチ7200RPM HDDでも残念ながらSlow diskエラーが出てIvoryソフトウェアシンセサイザーをまともに演奏することができなかったため、それを改善させようとPowerMac G5購入からいろいろと試行錯誤してきたレポートである。
Macintoshにつなぐことができる最も高速なストレージといえば、XSan、光ファイバーで接続したSAN(Storage Area Network)によるストレージであるが、高速・高信頼と複数のさまざまなコンピューターからの共有ができるというメリットがあり、実際にスタジオなどでも使用されている。
しかし、個人で購入するには簡単に新車が買えてしまうくらいの金額がかかる上に、19インチラックやそれなりの電源・冷却設備、騒音対策や温度管理も必要になるため、個人の家で持つにはあまり実用的ではない。有り余る予算と設備があれば、疑いなく最適なソリューションではある。
PowerMac G5にはSATA(シリアルATA)端子やFireWire 400、FireWire 800、USB 2.0などの端子があり、それぞれ内蔵または外付けのHDDを接続できる。FireWireはSCSIの代替としてAppleによって開発された高速安定転送を前提に設計されたものである。それに対しUSBはそもそもストレージでの高速なデータ転送用には設計されていないデバイスであり、2.0でもFireWire 400よりも速い480Mbpsだと言われているが、実際にはFireWire 400の半分程度の速度しか出ない上に割り込みが発生したりで安定したデータ転送には全く向かない。(データ転送に置いてはUntrusted Silly Busと言うべきだろう) そのためUSBは論外とする。
FireWire 400と800、外付けHDDにした場合、選択肢として現実に購入できるものはパラレル/シリアルIDE-FireWireブリッジを使用した製品である。仮にSCSIやSATAからFireWireに変換しているものがあれば、より高速な転送も実現できる可能性もあるが、IDEからのブリッジだと、IDE HDDの性能以上の転送速度は出ない。
FireWire 400の外付けHDDではIDEのHDDの転送速度よりも遅くなる場合もあるため、十分な性能が発揮されない場合もある。FireWire 800の場合、パラレルIDE HDDを2台RAID 0(ストライピング)構成にして速度を得られるように工夫している製品、たとえばLaCie d2 BigDisk

もあり、FireWire 400よりは明らかに高速な転送を実現できる。
そのため、普通にデータを蓄積しておきたいという目的であれば、FireWire 400、800で十分に快適なストレージを簡単に増設できる。ただ、m-audio FireWire 410

などのようなFireWireのオーディオインターフェースも使用している場合、オーディオ再生中にFireWireデバイスにアクセスが集中すると、オーディオの信号とデータ信号が大量にFireWire上を通ることになり、オーディオ再生が安定しなくなるというデメリットがある。
通常FireWireオーディオインターフェース自体、HDDとの同時使用は推奨していないか、FireWireオーディオインターフェースからデイジーチェーン接続することを推奨しているため、これはドライバのバグなどではなく仕様制限になってしまうものと考えられる。とはいえFireWireオーディオインターフェースは通常FireWire 400で接続され、FireWire 800のストレージを使用しようとした場合はデイジーチェーン接続もできない。
PowerMac G5にデフォルトで装備されているSATA内蔵HDDではソフトウェアシンセサイザーの快適な演奏は速度的に厳しくなるため、外付けで高速なHDDをつけたくてもFireWireがオーディオインターフェースで使用されている場合、残る選択肢は限られてくる。
最終的な結論として、SATAポートを増設し、シリアルATAのHDDを追加するという方法をとることができる。ハードウェアRAID機能を持つSATA増設カードと、持たないSATA増設カード、どちらの方が性能が高いのかいろいろと調べたところ、Mac OS Xの機能でソフトウェアRAID 0(ストライピング=厳密にはこれはRAIDというべきではないが)にして束ねた方が、下手なハードウェアRAIDよりも高速になるらしいということが分かった。
確かに世界一高速なバスと演算能力を持つPowerPCの圧倒的なパワーでは、ハードウェアRAIDのプロセッサの方が遅くなってしまうことも考えられるし、またハードウェアRAIDのSATAカードはたったの2台しか増設できない上にPCI-XではなくPCIカードしかない。
そこで、PCI-Xで最大8台のHDDを増設できる SonnetのTempo-X eSATA 4+4
というSATA増設PCI-Xカードを購入し、HDDの増設を行うことにした。
PowerMac G5にデフォルトで内蔵できる2台のHDDのほかに、もう2台追加して内蔵することのできるHDDマウンタもあるが、せっかくのPowerMac G5の熱設計を台無しにし、内部温度の上昇を招き、ファンの回転速度を上げる=騒音を大きくしてしまうこと、2台しか追加できないことなどの理由でこの方法は諦めた。
Tempo-Xでは外付け用にも4ポートのeSATA端子があり、ここから外に4台のSATAハードディスクを接続することができる。ここで分かりづらいのだが、SATAでは、内蔵用のL型のSATA-Iコネクタと外付け用に最近定義されたeSATAコネクタがある。Tempo-Xから生のSATA-Iコネクタを装備したハードディスクを接続するには、eSATA端子からSATA-Iへの変換を行うケーブルTCB-SATA-2/1
を別途購入する必要がある。
次に外付けのHDDのケースだが、複数台のHDDを内蔵し、HDDの電源と放熱の両方を考慮でき、同時にデザインも悪くないものを探すと、なかなか見あたらない。SATA外付けケースを4つも使用してコンセントが4つも占有されるのも論外だし、PowerMac G5内部から引っ張り出した12Vを使用するのも配線が煩わしくなる上に面倒である。
その結果、少し値が張るがデザイン、電源ともに安心できそうな製品として、マイクロソリューションのEnterprise SATA #02

という製品を見つけることができた。HDDを選ばなければ、
ENSATA2-Quad Set x 1 / Maxtor 6B250S0 250GB HD x 4
Sonnet Tempo-X eSATA 8 x 1 / Sonnet TCB-SATA-2/1 x 4
をまとめて組み込んだ
SUPER ENTERPRISE Quad SYSTEM 1.0TB組込動作確認済みソリューション
というものもあるので、ばらばらに買い集めるのが面倒な場合はこれを利用するのも一つの方法だ。
あとはSATAのHDDを購入するだけである。RAID 0(ストライピング)を行う場合でも、同じ容量のHDDで構築するのが望ましい。今回は、1GBあたりの単価が最も安く、かつ性能が高く、静かなものを選択したいと考えた。日立とIBMが統合したHitachi Global Storage Technologiesの製品を今まで好んで使用していたが、
133Gバイトプラッタ、NCQ対応の「Barracuda 7200.8 SATA NCQ」を試す
の記事を読みHDDのデータを記録する円盤(プラッタ)の枚数が少ない方が静音性に優れるという点が決め手になり、SeagateのBarracuda 7200.8 SATA NCQの250GBを4台購入し、1TBのストレージとした。
Mac OS Xの機能で4台を認識した後にRAID構成にしようとすると、ストライピングのブロックサイズを選択することができる。ブロックサイズにより、シーケンシャルアクセス性能・ランダムアクセス性能が大幅に変わるので慎重に選択する必要があるが、通常はデフォルトの32kで特に問題ないと言える。
SynthogyのピアノソフトウェアシンセサイザーIvory

はDVD 8枚、30GBにも及ぶ強烈なサンプルが収録されており、事実上最強のピアノシンセサイザーといえる。
個人的にYAMAHAのピアノはどんなものであれ好まないため、スタインウェイとベーゼンドルファーしか使用しない(YAMAHAは一度も鳴らしていない)が、非常に美しい音色を奏でることができる。こうした大容量のサンプルを60和音以上で奏でようとすると、内蔵SATA 1台では厳しくなる場合もあり、やはりストライピングにより高速化したストレージが必要になる。
ソフトウェアシンセサイザーの性能に気をよくして、EastWestのQuantum Leap Synphonic Orchestra GoldやSPECTRASONICS ATMOSPHERE、KORG LEGACY COLLECTION、dfh SUPERIOR
なども購入してしまい、オーケストラとピアノ、各種シンセサイザーなどによる美しい演奏が快適に行えるようになった。
4台構成でまとめて1台に見せかけるストライピングSATAドライブ、もちろんメリットだけではなく、高速なアクセスが可能になるというメリットがある反面、4台のHDDのうち1台でもクラッシュしてしまうと、全てが台無しになってしまうというリスクもあるため、データの保存用ドライブにするのではなく、巨大なテンポラリ領域と割り切り、データがなくなっても困らないように大切なデータは別のドライブにもバックアップしておくのが望ましい。
文: ふうたん